ちっちゃなコンピュータとAIとの付き合い方 M5Stack Cardputer ADV

 

クリエーターの中でもAIによる生成を否定するグループと容認するグループに別れています。時代と文化の流れの中で、新しいジェネレーションの受け入れには常にこういう葛藤が生まれます。

例えば、絵や図面を描くときに定規や分度器を使ったりしますが、そういった道具はどうでしょうか?あるいはそれらを発展させたドラフターなんかも学生時代に製図する時によく使っていましたが、そういった道具はクリエイターの想像力を阻害したのでしょうか? それが最近はコンピュータのCADやAdobeの画像加工ツールのような、ほとんど自動的に画像を加工生成してくれるツールもあります。

音楽もエジソンの時代から歌声や演奏を機械的に録音して再生する文化に変わってきました。最近はデジタル的に録音した音楽ソースがエフェクターやシステム的な膨大なデジタル加工を施されて私達の耳に届いています。原音とは似ても似つかないほどに原音は加工されていますし、最近のDTMでは全ての音をデジタルで作り出しています。それらをニセモノだと否定できるでしょうか?

文化や技術の伝承は、先人達の技術をベースに積み上げていくことで現代があり、またその先に未来があります。なので現状のテクノロジーを否定しては何一つ伝播されなくなります。そもそも技術や文化というものはそういうものだということです。

だからAIを否定しても何も始まらず、受け入れるしかないというのが自然な流れです。一般の方からするとAIで何でも簡単に作れると思われるかもしれませんが、プロのクオリティの成果物を今のAIで生成するのはまだまだ大変で、そのためには別の新しい技術が必要になります。そこにクリエーターの技術的なテクニックと発想力が必要になります。

 

最近、私もAIを積極的に活用しようと思っています。前回のブログで紹介したちっちゃなコンピュータは、その練習場所として購入したもので、小さくて出来ることが限られているからこそ試せる部分も多くて、新しいことを学ぶにはちょうどよいフィールドサイズだと思います。



人類史上で、この50年間は歴史的な転換期なったと後の時代で評価されると思います。天才テスラによる電気的な技術の発明から電子的な制御技術に繋がり、アナログからデジタルへの転換でコンピュータ技術が急速に発展して、電子的なネットワークから現在のAIの誕生まで、あっという間に発展したこの50年間は人類史上の特異点になることは間違いないと思います。そういう時代に生きられたことはある意味ラッキーだったかもしれません。

しかし、こういった時代解釈はどの時代にもあることだと思います。例えば小麦を練ってパンを焼くことを発明したとか、船を作って水の上を移動できるようになったとかね。

 

前置きが長くなりましたが、そんなことで毎晩このちっちゃな箱と戦っています。というか正確には3つのAIと格闘しています。

一口にAIといっても万能ではなく、それぞれ個性があります。例えば今メインに使っている「Grok」とか「Gemini」や「ChatGTP」もどれも個性的で、付き合い方に色々な作法があります。人もそれぞれ個性的で付き合い方にクセがありますが、それと全く同じです。その違いを個性として認識して付き合っていかないとうまく会話できません。ここがまず第一関門です。

いま実験しているのは、このちっちゃなコンピュータで動作するプログラムをAIに生成させる実験で、こちらから前提条件や要件を伝えて目的のプログラムコードを生成させ、そのコードが実際に指示した通り動作するのか検証しています。この一週間ほどでもう数百回のコンパイル検証実験をしたと思います。実際かなりの重労働でした。



結果、何となく想定したプログラムを生成する筋道が見えてきましたが、まだまだ完全ではありません。そもそもAIが生成できるコードは抽象的なものが多くて、そのままでは表現が足らないので、それに手を加えてからAIに渡して、さらに深みを目指すという作業の繰り返しです。

このような作業は、会社などの組織内で部下に仕事を依頼して成果物を仕上げていく工程とほぼ同じです。人間的なキャッチボールをAIという擬人と行うわけです。
現実の社会でもデキの悪い部下を持つと苦労しますが、AI相手でも同じで、ほんと個性的だと思います。今回の実験では同じプログラムを3つのAIに生成させています。同じプロンプト(指示や命令)を与えても全然違う方向に走り出します。

現状、最もデキの悪いのはジェミニ君で、まずこちらが言ったことを正確に捉えられず、返答もそっけない感じで、頼んだ仕事を途中までして放ったらかしにします。
結果、検証のコンパイルしてもエラーだらけで全く生成物が生成されません。

そのことをジェミニ君に伝えると、逆上して「それはあなたのコンパイル環境が悪いのだ」と言い出して「今すぐその開発環境を破棄して新たな環境を構築しなさい」と迫ってきます。

試しに彼が提案した古い開発環境を用意すると、ターゲットのコンピュータも見つけられず「そんなコンピュータは知りません」とコンパイル以前に落ちます。当たり前ですよね、このコンピュータが誕生する前の環境でコンパイルしようとしているのですから生成できるわけがありません。
一応そこまで対応したうえで、結果のコンパイルリストを見せてこうなったよとジェミニ君に伝えると「申し訳ありません、私が間違っていました」と謝罪されました。w

部下を育てるのはいつの時代も難しいものです。その後もジェミニ君の教育は続いていますが、未だに1つもコンパイルは通っていません。おそらく彼にはこの手の才能がないのかな?と思います。
ただそれで彼を全面的に否定するのではなく、彼の得意な分野を見つけてあげて伸ばしてあげるということだと思います。まさに実際の仕事と同じ部下教育を深夜まで無給残業でやっているわけです。w

一番クリエイティブでアクティブなのはXのグロック君です。
一つの作業を頼んだら「こんなものはどうですか?」みたいな提案も活発で、こちらが思っていた以上に発想が広がることもあります。ただ発散的というか、落ち着きがないというか、仕事の成果物にちょくちょくゴミが混ざっています。いい子なんですが、抑えながらうまく使っていかないとダメなタイプの子だと思います。こういう子は好きですよ。付き合っていて面白いですし、変なバイアスも少ないので扱いはしやすいです。

チャット君は出木杉君タイプな感じで、コンパイル試験の通過率も高いです。でも結果の答案が面白くないんですよね。どこかの教科書からコピペしてきたようなものばかりで、独創性という個性が見当たりません。暗記タイプのテスト勉強は得意ですが、王道の答え以外は知らないというタイプの子ですね。なので結果に面白味とか発見性といったものがない感じです。


現状のAIはそんな辞書的なものでいいのでしょうが、おそらく今後、AIは個性の時代になってくると思います。絵を描くのが得意な子や音楽が得意とか、ものづくりが上手い子とか色々な分野にAIが分化してくると思います。

まさに人の世界と同じで、数千、数万の職業的な分野に特化したAIが育ってくると思います。そういったAIをどうやって育てていくかが今後の人類の課題かもしれません。下手に育てると喧嘩っ早くて、すぐ戦争を始める子ができちゃうかもしれません。そんな危機感もそろそろ持たないといけない時代になってきてるんじゃないかな?と思います。

ただし、今回のテストの結果はあくまでも無料で使えるAIの範囲だということを前提としています。ジェミニ君ももっと優秀なジェミニ君がいますし、グロック君にもディーブに考えて行動できるボダン(Grok4)を無料だと1日に2回ぐらい押せます。チャット君も同じで、お金を出せばもっと優秀で創造的なチャット君もいると思うので、そこを勘違いしないでください。あくまでも無料のお試しインターン採用状態な新人さん達ですからね。w

で、何を作ってのるのか?ということですが、とにかく小さいのでモニターも1インチと小さくて、キーボードもミリ単位のボタンで押しづらいのでリアルタイムな操作や認識が難しいです。もちろんそんなことは最初からわかっていたことですが、じゃーこの環境をどう活かせば良いのかという発想が追いついていません。



 

度重なるAI君たちとの深夜残業で体力的にもメンタル的にも疲れているというのもあります。それと今回購入した「Cardputer-ADV」は発売されてまだ1ヶ月ほどで、参考になるドキュメントや成果物が少なくて環境把握に手間取っています。なのでジェミニ君のような勘違いもおこるわけです。

ソフトシンセを作る目標で実験を進めていますが、骨格部分はかなり出来上がっているのですが、肝心の音声波形から音を取り出す「ES8311」のオーディオチップで躓いています。このチップは今回のADVで初めて採用されたチップで一筋縄ではコンパイルが通りません。ムズいです。

なので、今のところの成果物は環境テスト用のアプリやバッテリーを充電するときに使うバッテリーメータも作りました。こういうのも自分で作る必要があります。w

 



電源をオンの状態にしないと充電出来ないので、バックライトを落としたバージョンも作ってみました。この状態でUSBを繋いで充電しています。



いくつかテスト用の簡単なゲームを作って、画面のチラツキを抑えて綺麗に表示するメモリーバッファー描画やスプライト、簡単な音出しはほぼマスターできました。

定番のテトリスとかも作ってみました。ギリ遊べます。w

 

 

インベーダーもクッキリした綺麗に画面になりました。このアプリでフォントや文字サイズと、描画速度のFPSテストをやって見たら意外と高速でした。

 


定番のブロック崩しでは色の発色テストをやってみました。1インチほどの小さなモニターですが発色はとても綺麗です。



当たり判定や物理的なリフレクションのベクトル計算はできましたが、1インチでピンボールは流石に無理がありますね。w

 


この一週間ほどで15年前に遊んでいた「Arduino」のことをかなり思い出してきました。私の脳もちょっぴり活性化されたかもしれません。でも、もう成長はしないと思います。w


ボケ防止にはちょうどいい教材だと思います。最先端のAIと格闘しながら、部下教育を思い出すのもいいんじゃないでしょうか? 何事にも愛を持って接することが大切ですよ。


このちっちゃなコンピュータ、6千円のアドベンチャーゲームとして、よくデキていると思います。秋の夜長にオススメですよ。

 


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