空き缶スターリングエンジンの作り方
空き缶スターリングエンジンの作り方をご紹介します。
その前に、懐かしの自作スターリングエンジンを動かしてみました。
Stirling engine 「自作スターリングエンジン」
これ作ったのは10年前、未だに次の展開が出来ていない問題児です。
さてどうするか?・・・
こんなページがネットの隅に残っていました。
http://www.geocities.co.jp/PowderRoom-Tulip/6529/wood/engin2.htm
以前、自室に大きなタライのお池作り、日夜ポンポン船造りに没頭していた時期がありました。実はポンポン船の動力はスターリングエンジンなのです。
つまりエントロピーで動いているのです。(大げさな)
「ポンポン船」プロジェクト
http://blogs.yahoo.co.jp/kai_yamamoto/folder/1507676.html
ポンポン船は熱源で熱しられたポンプ内の水が膨張することでパイプから噴出します。水を噴出することでポンプ内の圧力が下がり、周りの水が逆流してポンプに吸い込まれポンプの水温を下げます。この出したり吸ったりする細動を繰り返すことでポンポン船は前進します。これがスターリングエンジンの原理です。
「噴出した分を吸い込んでいたらちっとも前進しないじゃないか?」
と思われるかもしれませんが、吸い込む時はパイプの周り全体から吸い込まれ、噴出する時は一気に後方の一方向に固まって噴出されるので、全体の運動ベクトルの合計は後方に反発する力が増すことになって前進します。
「扇風機の前は涼しいですが、後ろは涼しくない」と同じ原理です。
ポンポン船って面白いでしょう。
それでは本題の空き缶スターリングエンジンを作っていきたいと思います。
まず主材となる空き缶を2本用意してください。
銘柄は問いませんが、出来るだけ同じものがいいと思います。
アルミ缶のほうが工作は簡単です。
もちろんアルコール入りでなくても大丈夫です。w
たまたま手元にはアルコール入りしかなかったで無理して頑張って飲みました。
・・・おいちかったでチュ!
まずはこんな感じにカットしてください。
アルミ缶はカッターやハサミで簡単に切れると思います。
今回のスターリングエンジンの特徴としてピストンを2つ利用します。
一つは「ディスプレーサ」と呼ばれ、暖かい空気と冷たい空気の交換を行うためのピストンです。もう一つは「パワーピストン」と呼ばれ、温度差による気圧の伸縮を利用して動力を取り出します。
「ディスプレーサ」は空気の入れ替えを行いますのでシリンダーのサイズに比べて90%~95%ぐらいのサイズでかなり隙間があります。その隙間を空気がすり抜ける仕組みです。
まずは「ディスプレーサ」を空き缶の蓋の部分で2つ貼り合わせて作ります。手を切らないように気をつけて下さい。滑り止め付きの手袋があれば完璧です。
エンジンのボディも適当にカットしました。
1号機なので「ONE」なのです。
こういうゴミ工作は価値が形成される過程を体験できます。工作する前は完全なゴミなんですが、カッターやハサミでカットしていくと部品としての付加価値が形成されるのです。まー所詮ゴミはゴミなんですが・・・
スターリングエンジンを動かすための最大のポイントは気密性です。
このエンジンは一般的なガソリンエンジンの内燃機関と違い爆発を伴いません。強力な爆発を伴うエンジンは少々漏れてても力技で動きますが、スターリングはシリンダ内の空気の極小さな気圧の変化を利用して動く仕組みです。ですから空気の漏れがあると致命的なのです。
もちろん厳密な密閉空間ではピストンも動作することができません。
ある程度の極小さな隙間はしかたないのですが、大きく漏れているとパンクしたタイヤのように役に立たないのです。出来るだけ空気が漏れにくい丁寧な工作が必要です。
「ディスプレーサ」の軸受部分が一番空気漏れを起こす箇所になります。
出来るだけピッタリでスルスルと動作する軸と軸受になりそうなものを身の回りで探してみてください。
今回は硬質なプラスチックのパイプとピッタリなネジ棒を見つけました。
昔のラジコンの残骸ですが、ゼムクリップなんかも使えるかと思います。
接着にはゴム系ボンドを使います。
100均に売ってるボンドで十分です。万能ボンドらしいです。w
アルミ缶にもよく接着しますし気密を保つためにも効果的です。
パワーピストは空き缶の切れ端を丸めて筒を作りました。
位置的にはこんな感じ・・・適当に目分量です。
組み立てるとこんな感じです。
パワーピストンは機密性が重要です。
本来は非常に高精度に擦り合わせされたピストが必要ですが、空き缶では無理です。
簡単な方法としてゴムの膜を使ったパワーピストを作ります。
100均に売ってる極うすの手袋が調度良いと思います。
6枚も入ってるので実験に使うのなら一生分あると思います。
ここからはお勉強の時間です。
スターリングエンジンの熱交換タイミングを理解しましょう。
今回のスターリングエンジンはシリンダの下から熱を加えます。
上部の蓋の部分には水や氷を入れて冷却します。
つまりシリンダの下部がホットゾーンで上部がクールゾーンです。
その間の空気を強制的に交換するのがディスプレーサで、それにタイミングを同調してパワーピストが動きます。この時、パワーピストンはディスプレーサのタイミングより約90度(1/4サイクル)遅れて動作します。ここがスターリングエンジンが動作するミソです。
1.下部の温かい空気が上部の冷たいゾーン送られた状態です。
2.上部の空気が急に冷えることでバキューム力が発生すると同時に空気が入れ替わり始めます。
3.上部の冷たい空気が下部のホットゾーンに送られ温められます。
4.下部で温められた空気が上部に送られ上部の気圧が上がり空気が入れ替わり始めます。
この1~4のサイクルを繰り返します。
つまり下で温められた空気が上部に送られると、上部の気圧が上がりパワーピストを押し上げます。直後に暖かい空気は冷却されるため体積の収縮が起こりパワーピストを引き下げます。この動作がスターリングエンジンを動かす原理です。
よって回転する方向に意味があることに注意してください。
逆回転はしません。
ということでこのクランクの構造が重要です。
ディスプレーサとパワーピストのクランクは90°ずれています。
クランクシャフトは大きめのゼムクリップ、リンケージロッドは小さいゼムクリップを伸ばして作りました。
もう一つエンジンになくてはならないのがフライホイールです。
フライホイールはピストンの垂直往復運動を回転運動としてパワーを一時的に蓄えるバッテリーのようなものです。この機構がなければどれだけ高性能なエンジンでも動きません。回転式エンジンのサイクル連携すめための原理的な構造部品です。
今回は要らなくなったCDを使っています。
効率的なフライホイール効果を生むために、ある程度の重量とサイズが必要です。
2枚組にしてもいいかもしれませんね。
以上で一応完成です。
失敗は成功のもと。
一発で動かすのは中々難しいのです。
テストの結果、1号機は動きませんでした・・・
パワーピストンに掛かる力が非常に弱いようです。
どうも十分な空気の循環が起こっていないようです。
それとディスプレーサとピストンの軸が重過ぎるようです。
・・・ダイエットしてみました。
かなりスッキリしましたが・・・
テストの結果、やはりダメでした。
空き缶の蓋で作ったディスプレーサは使いものにならないようです。
で、もう一缶がんばってビールを飲んで、切り開いたアルミの板から新たにディスプレーサを切り貼りで作ってみました。
切り開いたアルミ缶は巻き癖が付いていますが、裏返してラップの芯のようなものでしごくと巻き癖が取れて平らなアルミ板になります。それをチョキチョキしてアルミの饅頭を作ります。サイズも少し大きめにしましたが、中空なので非常に軽量です。
最終型はこんな感じです。
ろうそく用のコンロも作ってみました。
では、実験です。
Beer Can Stirling Engine 「空き缶でスターリングエンジンを作る」
https://youtu.be/vXHm3Hrs32g
意外と元気です。
エンジンの上の皿に氷と水を入れて冷やしています。
スターリングエンジンは温度差で動作しますので、これで一気にパワーアップします。
火力をアップすれば回転数が上がります。
ただし、あまり高温にするとボンドが燃えますのでほどほどにしてください。
あくまでも原理実験を楽しむためのもので実用性はありません。
カシャカシャと動く姿をボーと眺めているのがいいんじゃないでしょうか?
人生にはライバルは必要です。
空き缶エンジンでも努力すればこの域までイケるようです。
Pop can Stirling engine, 0-900 rpm in 3 seconds!
https://youtu.be/LFxNEBhS1AM
んーーー早い!
火力はおそらくアルコールコンロだと思います。
見た目のチープさはカモフラージュで、中身は相当緻密に煮詰められていると推測します。クランクシャフトの太さと軸受に本気度がうかがえます。ディスプレーサには蓄熱性の高いスチールウール利用しているようでフライホイルにはバランサーも付いてます。
こちらも参考になると思います。
Warsteiner - Stirlingmotor / Stirling engine watercooled 1572 rpm
https://youtu.be/dNQTNfuNjfk
是非これを超えるエンジンを作ってみたいものですね。
チャレンジャー求む!
【追加】
かつお節の空き缶で、スターリングエンジン用のストーブを作りました。
Can stove Stirling Engine 「空き缶で作るスターリングエンジン」
これで野外で焚き火遊びしながらエンジンを動かせます。
空き缶工作は楽しいですねー
【続編】久々の空き缶スターリングエンジン
http://ttripper.blogspot.jp/2017/07/blog-post.html